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こんなに使いづらい「経営承継円滑化法&事業承継税制」その5<贈与税の納税猶予制度>

  • Posted by: 小湊 格
  • 2009年9月17日 16:15

事業承継税制は、中小企業経営者の要望に応え、農業相続人に対する農業経営継続を支援する税制である農地の納税猶予制度をベースに制定された制度です。農業経営者には、農業経営の継続を支援する制度として、農地の一括贈与制度が昭和39年に制定されています。中小企業経営者の継続支援のために制定された経営承継円滑化法と事業承継税制においても、農業経営の継続を支援する農地の一括贈与制度と同様に"非上場株式に係わる贈与税の納税猶予制度"が制定されています。

前回まで4回のわたり「経営承継円滑化法」と「事業承継税制」を解説してまいりましたが、この"非上場株式に係わる贈与税の納税猶予制度"も制度運営の制約が多く、また、贈与税という高額の税金を猶予すること、納税猶予の打ち切りの事由が生じた場合には、猶予されている"贈与額"とその本税に対する"年3.6%の割合の利子税"を納付しなければならないことなど、この"非上場株式に係わる贈与税の納税猶予制度"は、"こんなに使いづらい制度"そして"高額な贈与税を納付するリスクのある制度"です。

■制度の仕組み

 非上場株式について、贈与税の納税猶予制度の適用が受けられる会社は、相続での適用と同様に、経営円滑化法による経済産業大臣の認定を受けた中小企業者です。

①代表権を有していた者で、既に役員も退任している贈与者が、後継者である経営承継受贈者に、その保有する株式の全てを贈与する。但し、納税猶予の対象となる株式は、後継者である経営承継受贈者の保有分を含めて、発行済み議決権株式の3分の2が上限です。

②後継者である経営承継受贈者が株式を保有し続けて死亡した場合、若しくは、代表権を有していた贈与者が死亡した場合に、贈与税の全額が免除される。

③納税猶予制度の適用を継続維持するためには、相続税と同様の事業継続要件が課され、その維持が必要です。

■贈与者と受贈者の要件

 贈与税の納税猶予の適用を受けるには、贈与する者が役員でないことが、相続税の納税猶予制度との特徴的な違いとしてあげられますが、後継者である経営承継受贈者には次のようなよ要件が必要です。

①贈与の日において、20才以上である。

②贈与の日において、会社の代表者である。

③贈与の日まで3年以上会社の役員であった。

④贈与の時において、同族関係者と合わせて50%超の議決権を有し、かつ、筆頭株主である。

⑤当然ですが・・・経済産業大臣の確認を受けた特定後継者である。

■納税猶予が打ち切りとなる確定事由

贈与税の申告期限から5年間が、経営贈与承継期間です。この5年の期間に次の事由が生じた場合には、贈与税の猶予が確定し、猶予されている贈与税額と年3.6%の利子税を納付することとなります。主な確定事由です。

①経営承継受贈者が、会社の代表者でなくなったこと。

②基準日の常時使用従業員数が、贈与の時の80%未満となったこと。基準日は、贈与税の申告期限から、1年を経過する日ごとの日です。

③経営承継受贈者が、特例対象株式の一部または全てを譲渡若しくは贈与したこと。

④拒否権付種類株式を経営承継受贈者以外の者が有することとなったこと。

⑤会社が特例の対象とした株式の全部または一部を議決権制限株式に変更したこと。

■納税と利子税

納税猶予の確定事由が生じた場合には、確定事由が生じた日から2ヶ月を経過する日を期限として、猶予贈与税額を年3.6%の割合で計算した利子税とともに納付しなければなりません。

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