- 2009年9月17日 13:33
事業承継税制では、相続税の納税猶予額は、次のように計算されます。
1.相続税額を通常の相続税制によって計算します。経営承継人以外の相続税の納税者は、この計算により相続税を納付します。
2.経営承継相続人が、特例非上場株式等のみを相続したとして、他の相続財産を取得した者は実際の取得額とした相続財産の総額を基に相続税額を計算します。
3.経営承継相続人が、特例非上場株式等の20%相当額のみを相続したとして、他の相続財産を取得した者は実際の取得額とした相続財産の総額を基に相続税額を計算します。
4.納税猶予額は、2により算出された経営承継相続人の相続税額から、3により算出された経営承継相続人の相続税額を控除した金額となります。
実際の計算例を財務省資料と猶予額が少なくなる事例の比較でご紹介します。
■まず、財務省が資料で紹介している事例です。
[遺産総額3億円。相続財産に納税猶予の対象株式1億円。遺産は、子Aと子Bがそれぞれ1.5億円ずつ取得する。納税猶予の対象株式は、全て子Bが取得する。]
①通常の相続税額 子A2900万円、子B2900万円、相続税総額5800万円
②子Bが対象株式1億円のみを相続するとした場合の子Bの相続税額1600万円
③子Bが対象株式の20%(2千万円)のみを相続するとした場合の子Bの相続税額188万円
④よって、子Bの納税猶予税額は、②の1600万円から③の188万円を控除した1412万円となります。
⑤相続人子Bの納付税額は、通常の相続税額である2900万円から納税猶予額1421万円を控除した1488万円になります。
■次に、納税猶予の対象株式1億円を含む相続財産3億円の全てを子Bが取得したとして納税猶予額を計算してみます。
[遺産総額3億円。相続財産に納税猶予の対象株式1億円。遺産は、子Bが相続財産の3億円の全てを取得する。]
①子Bが全ての財産を取得しますので、通常の相続税総額5800万円
②子Bが対象株式1億円のみを相続するとした場合の子Bの相続税額350万円
③子Bが対象株式の20%(2千万円)のみを相続するとした場合の子Bの相続税額0万円
④よって、子Bの納税猶予税額は、②の万円から③の万円を控除した350万円となります。
⑤相続人子Bの納付税額は、通常の相続税額である5800万円から納税猶予額350万円を控除した5450万円になります。
よって、財務省資料のように相続財産が、分散されたケースと特定の相続人に財産が相続財産が集中したケースとでは、納税猶予額に大きな開きが出ます。特定の相続人に納税猶予の対象株式を含めた相続財産が集中したケースでは、納税猶予制度のメリットはほとんどないといって良いでしょう。