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各種申請書ブログ

少人数私募債

  • Posted by: 佐藤 剛
  • 2009年8月18日 18:00

中小企業や新規開業されたばかりの企業のオーナーとって、資金調達は常に頭の痛い問題です。金融機関からの調達が思うようにできず、社長自らが会社に貸し付けるということも多いのではないでしょうか。

そんな中、金融機関に頼らない新たな資金調達手段として近年注目が集まっているのが「少人数私募債」です。

これはいわゆる「社債」の一種ですが、大企業が多数を対象に募集する「公募債」と異なり、中小企業を対象に簡易な手続きで発行できるよう制度を整備したものです。

□少人数私募債の特徴

1.勧誘先は50人未満の「縁故者」に限られます。
「縁故者」とは具体的には社長とその親族、従業員、取引先などが挙げられ、金融機関は対象としてはいけません。顔の知れた信頼のおける相手にのみ勧誘を限定するので、発行手続が簡易になっているわけです。

2.募集総額は1億円未満
1億円を超える場合は「少人数私募債」とはみなされず、「有価証券届出書」等の複雑な届出が必要になってしまいます。

3.譲渡に制限を設けること
「譲渡には取締役会の承認を必要とする」旨の制限を設けなければなりません。前述の「縁故者」以外に社債が渡るのを防止するためのものです。

□少人数私募債のメリット

1.償還期間までは利息の一括払いだけでよい
金融機関から資金を調達すれば、原則毎月元金と利息の支払が生じますが、少人数私募債では一年または半年などの設定した期限ごとに利息を一括で支払うだけで済みます。

2.元金の償還も設定した時でよい
償還までの資金繰りが当面楽になります。また、償還期間が到来しても、債権者との合意により「借換発行」することもできます。

3.担保設定や保証金・保証人が不要

□発行手続

1.取締役会の決議
取締役会の決議だけで発行することができ、登記などの手続も必要ありません。取締役会では「募集総額」「社債一口の金額」「利率」「償還期間」「中途で換金する場合の方法」等を定めます。

2.「社債募集要項」「社債発行趣意書」の作成
取締役会での決定事項を「社債募集要項」としてまとめ、申込希望者に分かるようにします。また、重要なのが「社債発行趣意書」です。いかに「縁故者」からの調達とはいえ、相当額の資金を預かる以上「なぜ必要なのか」「会社をどう経営して発展させていくのか」を説明し、償還の義務を果たせることを証明しなければなりません。社長の経営にかける姿勢・思いを明確にすることが必要となるでしょう。

3.申込みと受付
希望する者に上記「社債募集要項」「社債発行趣意書」を渡し、それを読んだ上で「社債申込書」を記入して申し込んできた者に対して「募集決定通知書」を交付します。

4.申込証拠金の受け入れ
申込者より出資金の入金があったら、「預り証」を交付します。収入印紙の貼付が必要となる「社債券」に代えて「預り証」を発行することが実務では多いようです。

5.社債台帳の記入
社債権者の氏名・住所・出資口数・出資の異動等を記録した「社債台帳」を作成し、少人数私募債に関する管理を行います。

6.利息の支払
取締役会で決定し「社債募集要項」に記載した通りに毎年利息を支払います。この利息は国税15%+地方税5%の源泉徴収の対象となるので、その分を差し引いた金額を社債権者に支払い、源泉税は翌月10日までに国・県に支払うことになります。

特例有限会社

  • Posted by: 佐藤 剛
  • 2009年7月10日 18:18

前回、会社法のポイントとして「株式会社に一本化されました」という点を挙げました。では、それまで「有限会社」だったものはどうなっているのでしょうか。

会社法施行以前に「有限会社」であった会社は「特例有限会社」という立場を与えられました。あくまで「株式会社」ではあるのですが、その一形態として特例的に従来の有限会社とほぼ同様のまま存続を認められている、というわけです。

ただし「株式会社」ですから、旧有限会社での「社員」が「株主」に、社員の「出資一口」が「一株」とみなされます。したがって「社員総会」ではなく「株主総会」が開催されることになります。

また、決算公告の方法として「官報によって公告する」とされ、さらに前回の会社法のポイントとして挙げた「譲渡制限会社」であるともみなされます。

□登記簿謄本の確認を
特例有限会社(旧有限会社)では役員の任期がありません。定期的な役員改選登記が必要となる株式会社と比べると、会社設立後に定款や登記簿謄本を確認する機会が少ないというのが実情ではないでしょうか。

登記簿は、法務局の登記官によって前述の「みなし規定」に従い職権でいくつかの項目が追加・変更されています。一度謄本を取得して確認しておくことをお薦めします。

□定款の再作成
「みなし規定」によって文言を読み替えているとはいえ、会社法では「みなし規定による追加・変更・抹消事項を記載した書面」を作成し、株主や債権者から定款の閲覧・謄写等の請求があったときは開示する必要があると規定されています(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第6条)。

実際は定款をみなし規定にあわせて作成し直し、株主総会で形式的な定款変更決議を行うほうが、すっきりとしてなお良いと思われます。特に古い会社ですと定款が痛んでいたり、役員の入替があったりして現状にそぐわない場合も多く見受けられます。これを期に定款を見直してみてはいかがでしょう。

□株式会社への移行
会社法の施行により「貸借対照表の純資産の部が1,000万円を超えていなければならない」「取締役が3名以上必要」といった制限がなくなり、特例有限会社から株式会社への組織変更がしやすくなりました。

役員の任期や決算公告の義務がないなど、「旧有限会社で認められていたメリット」は特例有限会社でも引き続き認められており、また社名変更に伴う費用も当然発生します。

一方、「株式会社」となることのメリットとして「対外的な信用の向上」「取締役会や会計参与などの柔軟な機関設計」などが挙げられるでしょう。双方を勘案して組織変更するか否かを検討されたらよいと思われます。

株式会社に組織変更するためには株主総会(特例有限会社でも「株主総会」となります)の特別決議が必要です。「株式会社」の名称を含んだ新しい商号への変更・新しい定款の承認・役員の選任等を決議します。

その後、手続としては「特例有限会社の解散登記」「株式会社の設立登記」を同時に申請することになります。組織変更を決議した株主総会議事録・新しい定款・また新しい会社の実印を押印した改印届などを添付します。

登記が完了したら、税務署・社会保険事務所・金融機関などに届け出ます。また取引先への挨拶、封筒や名刺の作成なども必要になるでしょう。

会社設立

  • Posted by: 管理者
  • 2009年2月11日 17:33
このブログを始めるにあたり、会社設立の基本を何度かに分けてご紹介したいと思います。

平成18年に施行された「会社法」によって、会社設立の方法はそれまでと大きく変わりました。すでにご存知の方も多いと思われますが、主なポイントを確認してみましょう。

□資本金1円からでも設立できます
以前は「会社設立」というと株式会社なら1,000万円、有限会社でも300万円の資本金を準備する必要がありました。特例として資本金1円で設立することはできたのですが、煩雑な手続きを必要とした上、設立後5年以内に増資を行わなければならないという制限がありました。
会社法によってこの制限は撤廃され、資本金1円でも特別な手続を必要とせずに会社が設立できます。

□株式会社に一本化されました
商法の下で株式会社を設立したいと思っても、前述の最低資本金1,000万円の他に「取締役3名以上・監査役1名以上の設置義務」という条件がありました。「自分1人だけで会社をつくりたい」という場合は有限会社とせざるを得なかったのですが、会社法ではすべて「株式会社」とした上で、取締役や監査役の人数などについて柔軟な機関設計を認めるようになりました。したがって「1人取締役の株式会社」も設立可能となったわけです。

ただし1つだけ条件があります。それは

『会社のすべての株式の譲渡について会社の承認を必要とする』旨を定款で規定する

というものです。このような規定を定款でうたっている会社を「株式譲渡制限会社」と呼びますが、会社の規模や成長に応じた柔軟な機関設計を行うには、この「株式譲渡制限会社」でなければなりません。


以上の2点が最も大きな変更点ですが、その他にも

□類似商号規制の廃止
従来は、同一市町村内に「事業の目的が同じで会社名が類似した会社」を設立することはできませんでした。したがって、事前に法務局で似た名前の会社がないかを確認する必要があったのですが、会社法ではこの規制がなくなり、「同一住所で同一の商号の会社は登記できない」という制限だけになりました。
しかし、実務上はだからといって何でもよいということにはならないでしょう。商標権で保護された名称もありますし、紛らわしい名称はトラブルにならないとも限りません。

□会社目的の規制の緩和
商法の下では「具体性」と「適法性」が要件とされていましたが、「具体性」の要件が緩和されました。「小売業」「製造業」といった抽象的な目的でも認められるようになったのですが、会社として活動を考えた場合、具体的な目的をはっきりと記載しておくほうがよいでしょう。また、建設業や不動産業、古物商など許認可を必要とする事業では具体的な目的の記載が必要になるので注意が必要です。

□登記の際に「払込金保管証明」が不要
以前はいったん資本金を金融機関に預け入れて「払込金保管証明」を発行してもらう必要があり、また会社の設立登記が完了するまで資本金は動かせませんでした。
会社法ではこれに代えて「通帳などの写し(コピー)」を添付すれば足り、また登記完了前に資本金を動かすこともできるようになりました。

ただし、これはあらかじめ特定の発起人がすべての株式を引き受ける「発起設立」の場合だけであり、「募集設立」の場合は従来通り金融機関の「払込金保管証明」が必要となります。

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